ペイドサーチ不要論 ~eBayリスティング広告による実証~
Googleで「Amazon」を検索してみて欲しい。おそらく、上位2つのリスティング広告は「Amazon」サイトが出てくるものと思われる。一番上に出てくるベージュ色の背景になっている部分がペイドサーチ(検索キーワード広告)と呼ばれるものであり、このテキスト部分をユーザーがクリックするとAmazonに課金される仕組みになっている。
2番目に出ているAmazonという文字は、Googleの検索結果を表示したものであり、ここをクリックするとGoogleに広告収入は入らない。有名デパートや有名スポーツ店などの名称でも同じように検索してみて欲しい、結果は同じように表示される筈である。
eBayリサーチラボのThomas Blake、Chris Nosko、Steve Tadelisの3人がリリースした研究レポート「Consumer
Heterogeneity and Paid Search Effectiveness: A Large Scale Field Experiment」によると、eBayがリスティング広告を停止した後も、売上に変化は見られなかったという事実が見られた。彼らの研究によると、多くのペイドサーチによる広告課金は、売り上げを押し上げるものではなく、広告宣伝費がかかる割には、殆ど利益に貢献しないものである、との判断が下された。
下記企業の広告宣伝費を見ると分かるように、自社商品の宣伝に多くの資金を費やしている。アメリカの企業であれば、もちろんブラックフライデー(クリスマス)やスーパーボウル等のシーズンに多くの資金が投下される。しかしながら、投下した広告宣伝費が、どの程度効果があるのか、各商品がどれぐらい利益に貢献しているのかは定量的に特定できていない。
企業名(米国企業のみ)
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年間広告宣伝費
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L’Oreal
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13.4億ドル (≒1,340億円)
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General
Motors
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17.8億ドル (≒1,780億円)
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Chrysler
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11.9億ドル (≒1,190億円)
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Verizon
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16.4億ドル (≒1,640億円)
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AT&T
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19.0億ドル (≒1,900億円)
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Time
Warner
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12.8億ドル (≒1,280億円)
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Pfizer
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12.0億ドル (≒1,200億円)
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Source; Kantar Media's index
インターネットでは、これら全てを変えるもの=広告の効果測定が可能なものと認識されている。そこで、ペイドサーチについて2012年3月に eBayがリスティング広告を実験的に停止したところ、Yahoo!とBingではブランド名によるペイドサーチは売上へ貢献しないことを発見したのである。
消費者は、一番上にリスティング表示される「eBay」というテキスト広告がない場合、単純にオーガニックサーチ(自然検索)で一番上に表示される検索結果「eBay」をクリックして訪問してくる為、影響がないことが確認された。
Yahoo!とBingで効果検証ができた為、次はGoogleの全てのペイドサーチを一時停止してみたものの、明らかな売上の下落は確認できなかった。よって、消費者は中古商品をネット上で探す場合、eBayに直接アクセスするか、中古商品を辿っているうちに結局はeBayに辿り着く、という仮説が検証された。
*MSN Paid; マイクロソフト検索エンジンBingのペイドサーチによる流入量
*MSN Natural; マイクロソフト検索エンジンBingの自然検索による流入量
*Goog Paid; グーグル検索エンジンによるペイドサーチによる流入量
*Goog Natural; グーグル検索エンジンによる自然検索による流入量
Source; ebay research labs
eBayの実証で得られたファクト
① 購入意向が低い潜在層、新規顧客層は、広告全般に刺激を受ける傾向は認められる。
② しかしながら、特定の商品を探している、または購入意向のある顕在層は、特定の商品名による検索を行うため、広告効果は低い。
③ 商品名によるキーワード流入では「100円につき25円程度の売り上げ増加」が見られる。商品名が認知され、ネットでキーワードを最適化すれば約25%の売上増となる可能性がある。
④ 「ブランド名」によるペイドサーチの効果はほぼゼロに等しい。
⑤ また、競争が激しい分野や小規模のブランドであれば、eBayというビッグネームと違い、ペイドサーチの効果は、まだ出る可能性がある。よって費用対効果を最大限にするため、より注意深くリスティング広告への出費は検討する必要がある。
ちなみに現在、eBayのペイドサーチは行われていない。
By秋山尊謙
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