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2014年1月19日日曜日

顧客視点マーケティング

 ネット上での口コミや他者による評価が消費者の購買行動に浸透し、企業の売上に影響を及ぼしている事を認識してはいるものの、こうしたトレンドに真摯に向き合った対策は、未だに施していない企業もまだまだ多いであろう。こうした消費者を中心とした顧客の声に応じていくには、下記のようなマーケティング・アプローチが必要であると感じている。

インフルエンサー・ミックス
消費者の購買行動で、購入決定に至る要素は、おおよそ3つに大別できる。
 この3つの要素は、ゼロサムゲームと同様に各要素が相互に関連している。例えば、他者からの評価に大きく信頼・依存した購買決定が行われる場合、知覚度合いや企業のリリース情報への依存が相対的に下がる、といったインフルエンサー・ミックスという考え方である。
 ここ数年来、あらゆる商品やサービスにおいて、他者評価による自身の購買決定が格段に増え、日々の消費行動に大きな影響があるのは否めない。しかしながら、多くの例外もまだまだ存在する。例えば、牛乳のような日用品は、ある程度リピートする商品が決まっているものである(=知覚される選好・価値・経験)し、歯磨き粉やシャンプーのような商品では、そのパッケージデザインやブランド、価格、POPメッセージで購買が決定されるものだ。(=企業のリリース情報)

 ここで企業が自ら自身に問うてみなければならないことは、自社商品にとって、他者からの評価はどの程度購買決定に影響を及ぼしているか、ということであり、もし他者からの評価が大きく関連している業種や仕事内容であれば、マーケティング戦略の舵を今すぐにでも大きく切るべきである。

 他者からの評価が主となる商品やサービスを扱っている場合、ブランド力は、それほど重要ではなく、市場への参入障壁も、他業界と比較して低めである。よって機能のみを追求するPCや周辺機器などは、台湾・中国メーカーであっても有名ブロガーや利用者に評価されれば、大きなブランドに成長することも現実的なこととなる。
 現に、レストランチェーンやファストフードチェーンの業績が低迷する中、ミシュラン評価とまでは言はないものの、ログYelpなどで良い評価が付いたレストランや話題の宿などは売り上げを拡大させている。このような例からも、個人店やノンブランド商品であっても、お客様の評価やおもてなしを、顧客視点で常に考え抜くことこそが今やるべき事となる。


By秋山尊謙

2013年6月28日金曜日

ネット通販解禁となる「一般用医薬品(第1類医薬品)」市場規模

 一般用医薬品のネット販売が解禁される方向に動く中、ネット企業はその動きを虎視眈々と見守っている。
 市場の出方を伺っている間に、その市場規模や課題を考えてみたい。
 高齢化社会と言われる国内市場では、人口統計などから見ても医療・医薬系ビジネスの成長が目覚ましい。
 ネット上で販売される見込みの「第1類医薬品」の国内市場規模は「6,400億円」であり、他のドラッグストア取扱品との同時販売(マスクやうがい薬等)による相乗効果や高齢化による市場規模の成長率を勘案した場合、容易に8,000億円~1兆円規模も射程範囲となることが想定される。
 商品としての動きも、ネット上での販売となるとその購買の中心となるドライバーは、やはり「価格」が主戦場となることは間違いない。

 よって、より消費者や会員を大きく確保しているネット通販企業が参入する場合、ジェネリック品を中心に取り扱いアイテム点数も大きく拡大することになり、その購買力というパワーバランスから、半ばPB(プライベートブランド)と化すことや、取り扱い店舗限定のエクスクルーシヴ品も登場してくることになるであろう。


Data source; 厚生労働省
(1) アイテム数:医薬品情報データベース検索結果(平成25年5月)、市場規模:インテージSDI(平成
23
年度)
(2) 副作用発生頻度に関する推計値(1商品の平均価格を、第1類は2 ,000円、第2類は1,000円、第3類は1,000円と仮定して、市場規模から年間の販売数量を推計し、販売数1千万個当たりの副作用報告症例数を算出したもの(平均価格データ:日本チェーンドラッグストア協会提供))
副作用報告症例数の実数(平成23年度)は、第1類が12例、第2類が228例(内指定第2類143
)、第3類が12(医療用医薬品は、約37,000)

 ネット上での市販薬販売が解禁されることによって、リアルとネットでの違いとなるのは「情報量」の差である。患者の情報をどれだけ多く獲得できるか、という差がネット通販事業のキーポイントになるであろう。
 遠隔地での購入となると、コミュニケーションという通信媒体には困難な「個人認証」「症例判断」という壁が立ちはだかってはいるものの、テクノロジーの進化によりこうした壁も乗り越えられる拡張性を持ったサービスが望まれるのは確かなようである。

 新たなヘルスケア用アプリの登場や会員限定のSNSコミュニティの形成、O2O施策として病院への予約・送客など、派生ビジネスも視野に入れた消費者とのタッチポイントとなる「メディア媒体」の企画開発を急ぐ必要がある。
Data source; 厚生労働省
医薬・医療系検索キーワードや閲覧履歴、SNSによる調査は、個人情報保護法や取り扱い上の課題あり

2013年6月21日金曜日

ブリック・アンド・モルタルがネットショップに対抗する方法

 変化するには根気の要る作業が必要になる。何か大きな変化を受け入れる場合には、そう望めば何とかなるということ、神頼み、上手くいかなかったら最後は、どうにか対処すべく、問題に正面から取り組んでみる、という行動をとるのが普通の形ではないであろうか。
 ブリック・アンド・モルタルと呼ばれる従来からの店舗販売を行うお店は、ネットショップからの価格攻勢に対して、未だに動きが遅く、問題に対処できていない。
 店舗を構えないネットショップは、店舗を構えず、流通コストをカットしている分、低価格で販売できる。それに消費者は数クリックだけでいつでもどこでも手軽に買うことができる。

 店舗を構えるブリック・アンド・モルタルは、対抗策として「我々はより良いサービスをお客様に提供致します」と言った、あいまいなフレーズで、ネットショップの低価格攻勢から消費者の視線をそらす努力をして、何とかなると考えているようである。または、神頼みといった状況ではないだろうか。
 こうした状況から、消費者の行動は、実店舗で商品を陳列棚で確認してから携帯電話のアプリで同じ商品を検索し、価格の最も安いところで購入するという、店舗の「ショールーム化現象」が起きてくるであろう。ネットショップでは、しばしば送料無料であり、消費税分の割引キャンペーンも行われているため、購入するのはネットで、ということになるのは当然の流れだ。

 こうした状況を打開するためには、ネットショップとの違いを明確に打ち出した実店舗の営業施策を大きく変える必要がある。

ブランドの強化、差別化、高級化路線
非常に素晴らしい戦略で正統ではあるものの、従来の店舗施策と大きく異なるため実行するには困難が伴うであろう。

高級化路線ではないが差別性を取り込む戦略
 ユニークな商品を取り扱うことで、少しでも差別性を出すことで低価格競争とは違い、価値を提供しているというスタンスを示すこと。

高級路線でもなく、差別性もなく、低価格競争で正面戦争をする戦略
 ショールーム化現象とは言われているものの、メーカーに対して「実店舗での商品陳列特別割引」制度を導入してもらうことで、ネットショップと対抗できるようにする発言力を持つ戦略。

高級路線でもなく、差別性もなく、低価格競争でもなく、実店舗購入にアドバンテージを付加する戦略
 いくつかの商品は実店舗で簡単に購入できるものだ。例えば、ファッション・衣料品では、消費者は試着する、というアドバンテージが必ずある。また、10万円の商品と言う訳にはいかないが、元々価格の安い商材であれば、10%程度の差であれば、こうした商品を手に取る段階で、試してみる、体験させてみることをメリットとして、価格差が気にならないような、おもてなしを消費者に認識してもらうことだ。

 もちろん、それぞれ取り扱う商品の違い・特性から、一律一様に施策を適用するのではなく、ここで挙げた戦略の組み合わせにより、複合的に店舗施策を実施することが必要になる。

 実店舗であっても、ネットショップに対抗できる術はまだ残されており、存続していく余地はまだある。
消費者の大部分は、まだまだ実店舗で商品を購入しなければならない、と無意識に考えている習慣があり、そう望んでもいることも確かである。

ネットショップとリアル店舗では、どうしても価格差に目が行きやすい。ネットショップと対等に低価格戦争をするのは得策ではなく、価格だけにこだわった戦略を取り続けるのであれば、いずれ実店舗側が負けるのは目に見えている。
 よって「価値への投資と創造」が、実店舗の取るべき戦略であることには変わりがない。実店舗では、なぜ消費者がお店に来店してくれるのか「店舗に来店する理由」を深く考えてみる必要があり、一般的商品であっても差別性を付加するように努め、サービスや品質などが、目に見える、触れる、試せるといった物理的な効果を最大限に強調した施策をもって、消費者に商品を提供することが、店舗価値を最大化することにもつながってくるであろう。


By秋山尊謙

2013年6月20日木曜日

イーコマース企業が世界進出するために必要なこと

インターネットにEコマースと呼ばれるネットショッピング企業が興隆して久しい。そこで興味深い傾向を挙げるとしたら、全てのEコマース企業は、おおよそAmazonのビジネスモデルに酷似していると言えるのではないだろうか。もちろん細かい違いはあるものの、他のネットショッピングサイトは、Amazonモデルのただのコピーに過ぎないとも言えるかもしれない。その機能や商品を売るスタイルなどが他社に真似されているとしたら、先行企業のAmazonにとって、それは大いに恥ずべきことだ。



インドにはFlipkartという有名なネットショッピングサイトがあり、ロシアにはOzonというメジャーなサイトがある。タイ・インドネシア・その他東南アジア市場にはフィリピンのLazadaが君臨している状態だ。Amazonは大手にも関わらず、インド以外の現地ではプレゼンスは無いに等しい。なぜならインドでは外国からの直接投資が厳しく制約されていることからAmazonの営業活動は制限されてしまっているためだ。こうした競合他社の活況を横目で見ながらAmazonとしては、さぞかし、ほぞを噛む思いでいるに違いない。





 アメリカでeBayが興隆してきた時も、アメリカ以外の地域でも同じようなサービスが竹の子の如く各国で立ち上がる現象が起きていた。ネット業界では「ファーストムーバー・アドバンテージ」という先手必勝、早い者勝ちという言葉があるが、このような類似する各社サービスの規模は今では大規模に拡大し、今から反撃するには手遅れであり、取り返しのつかない規模にまで達している。



巷では、ファーストムーバー・アドバンテージとしばしば叫ばれてはいるものの、この言葉だけで説明するには判断が早急で簡単すぎて、納得が出来ない論理ではないかと思われる。
このロジックによると、新たなビジネスモデルを考案した場合、他の国へすぐに同じモデルが波及していくというものだ。
もちろん、いくつかの事例を挙げるとしたら、この説明でも正しいことが分かる。例えば、英語圏であるイギリス、カナダ、オーストラリアでの成功に、ドイツ、日本での成功もカウントできる。
しかしながら、アメリカのイーコマースモデルを、インド、ロシア、インドネシア等に適用してみると、事情は違ってくる。
こうした国々では中産階級の消費者が年々増大しているにもかかわらずAmazonモデルが不調に終わっているのは明白だ。ということは、これら新興国では、別の次元で根本的な課題が存在しているということになる。


ファーストムーバー・アドバンテージでは説明のできない理由として挙げられる理由を下記にまとめてみた。

1.    一般消費者の銀行での新規口座開設率や口座保有率

2.    国民のクレジットカード保有率との関係がある。プラスチックのカード一枚に猜疑心がある。現に、インドのクレジットカード保有率は人口の2%に過ぎないし、ベトナムではキャッシュ・オン・デリバリーにより、ネットショップが成り立っている。ロシアのOzonでは約8割がこのキャッシュ・オン・デリバリー(COD)だ。

3.    また、ロシアやインドの郵便局は全く信用されていない、という配送・ロジスティックシステム自体にも課題がある。また、宅配事業者の参入の余地はあるものの、うまく稼働しているところは少ないのが現状だ。むしろ、自らこうした課題解決を行わなければ事業の成功や進展はないものと考えた方がよい。

4.    1人あたりのGDP(国内総生産)は、インドで$3,900、インドネシアでは$5,000であり、アメリカの$49,800とは比べようがない。

5.    固定電話やブロードバンドといったインフラの整備自体も遅れており、どこでもネット環境があるかと言えばそうでもないという現実がある。こうした地域では、固定電話を引かずにスマートフォンだけを保有してネットへアクセスしていることから、そもそもPCではなくスマートフォンユーザーに絞った、使い易いショッピングサイト作りをしなければならない。

 このような状況を総合的に勘案した場合、現地の消費者に合うような環境を最低限考慮したビジネスモデルをその国に応じて展開する必要があるということだ。


 イーコマース企業が今後、国内だけの領域に留まらず、国際的に事業展開していこうとする時に考えられることは、自身で事業以外の領域をもカバーするように資本を投下して自身の手で収益化を図ることだ。
ただし自国と同じ環境が備わっている場合は上手くいくかもしれないが、文化・宗教の違いがある場合、DIYで実行すると、しばしば失敗するであろう。
 もう一つは、全く逆の視点から考えることである。それが現地人の好みや考え方、その文化に至る消費者意識や行動を理解している立場からのアプローチする方法である。これが正に、現地のコピーキャット企業の視点になる。
 Amazonと同じビジネスを自国で展開する、という思いでネットショップとして起業するにあたり、彼らは単にそのまま真似をして、コピーしているという訳ではなく、自国のニーズや意識に合ったショッピングサイトに改良しているため、大きく成長するドライバーになっているためだ。

 ロシアの有名なOzonでは、アメリカのZapposの顧客満足主義戦略の一部を取り入れ、コールセンターの電話番号を各ページに記載したり、CODによる支払い機能を持つO-Courierという配送業者を取り込んで差別化を果たしている。
 更には、旅行領域にまで手を広げ、Ozonトラベルを立ち上げており、ここには楽天からの出資も含まれている。

 O-Courier(オークーリエ: 代引き配達サービス)


OZON Travelのトップページ画像

 アメリカのeBayはドイツのAlando、欧州のiBazar、韓国のInternet Auction、インドのBazeeをそれぞれ買収している。買収後は郷に入れば郷に従うように、現地の特徴を生かし続けた戦略を取り続けている。ローカルサイトを残すことや、現地のマーケティングアプローチを尊重すること、マネジメントチームを残す、というポリシーで運営を継続している。

 もう1つ、eBayは経営統合のメリットとして国際的な側面も強調することも忘れてはいない。売主が商品を出品したら、海外のマーケットで海外のバイヤーの目に留まるということになり、商機が向上するということで、大きなアピールポイントとなっている。このメリットは自国内だけで営業を続けてきたローカルショッピングサイトにとって、海外進出も兼ねることができるため、非常に大きな魅力があると言える。

 よって、ビジネスが成り立つ為の環境基盤の整備、環境がない場合は代替サービスを導入することで、現地に受け入れられるビジネスモデルとして現地のスタイルに合った施策を上手く用いながら市場に浸透していくことが重要になるであろう。


By秋山尊謙